仕様変更の対応や関係部署との調整で1週間が終わると、機械設計はやめとけという声が自分のことのように思えてきます。
やめとけと言われる理由は、会社の設計の進め方や担当する製品で変わるものと、機械設計の仕事そのものに付くものに分かれます。前者は機械設計のまま会社を替えれば消え、後者は職種を替えないと残る不満です。
この記事では、やめとけと言われる理由と、自分の不満がどちらに当たるかの見分け方、転職先の求人で確かめることを解説します。
機械設計がやめとけと言われる理由

やめとけと言われる理由は、次の6つの見出しに分かれます。
納期前の仕様変更で残業が増える
取引先の要望や依頼で残業が多くなることは、厚労省のjob tagが機械設計技術者の労働条件に挙げています。要望や仕様が後から変わると、設計のやり直しが残業時間に響く場合があります。
令和7年賃金構造基本統計調査で、機械設計に限らず生産技術などを含む機械技術者を30〜34歳どうしで比べます。月の超過実労働時間は1,000人以上が24時間、10〜99人が14時間です。年齢をそろえても規模で開きがあり、大手のほうが長くなっています。この数字は6月1か月分の平均で、仕様変更が重なる繁忙期の長さではありません。
図面のミスが製品の不具合に直結する
厚労省のjob tagは、機械設計の仕事を、コンセプトの設定とシミュレーション、多くの場合は試作品での検証、仕様の確定、量産化を前提とした設計図の作成の順に書いています。
設計図自体が実現可能か、ミスがないかのチェックも、同じ記載に業務として入っています。設計者が見落とすと、そのミスは量産を前提とした設計図にそのまま残ります。
関係部署の板挟みになる
顧客の要望と社内・関係会社の事情が食い違うとき、設計者は両方とすり合わせる立場に置かれます。
厚労省のjob tagでは、顧客の要望を確認するタスクの実施率が98.4%、社内・関係会社と情報を共有してすり合わせを行うタスクが100.0%で、ほとんどの機械設計者が両方を担当しています。
覚えることが多くついていけない
厚労省のjob tagは、機械設計技術者が一人前と認められるまでに入社後5〜10年程度かかるとしています。
覚える対象は設計の技術だけでなく、仕事に直結する関連法や輸出先の指令にも及びます。関連法には品質表示法、電気用品安全法、電波法、有害物質規制法があり、輸出する製品ではWEEEやRoHSなどの指令も念頭に置きます。
地味な作業の繰り返しに飽きる
作業の繰り返しに飽きるかどうかは、担当する製品と工程で変わります。
担当を替えれば仕事の中身が変わる不満で、機械設計という職種そのものに付く不満とは分けて考えます。
大手以外では年収が伸びにくい
同じ調査で見ると、機械技術者の年収換算は、会社の規模で開きます。
| 会社の規模(従業員数) | 年収換算(機械技術者・年齢計) |
|---|---|
| 1,000人以上 | 745.5万円 |
| 100〜999人 | 610.4万円 |
| 10〜99人 | 525.4万円 |
規模計は659.0万円です。25〜29歳から40〜44歳までの伸びは、大手で530.8万円から851.0万円、100〜999人で497.2万円から686.7万円です。
40〜44歳どうしで比べると、両者の差は約164万円です。
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担当する製品ごとのきつさ

製品ごとにきつさの出方は変わります。今の不満が自分の担当製品の負担なのか、機械設計という職種の負担なのかは、担当製品ごとの違いを見ると判断しやすくなります。
ニデックの小型モータ事業本部のメカ設計エンジニア(G3-G4)の求人は、職場紹介に、残業はあると書いています。その理由は成長製品の開発を行うためで、担当する製品が残業の出方を左右する例です。
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製造装置
製造装置のきつさは、受け持つ範囲の広さと、他の職種の担当者との調整です。KOKUSAI ELECTRICの機械エンジニアの求人は、業務内容に構想から評価までを挙げ、電気エンジニアやプロセスエンジニアと密に連絡を取って進めると書いています。
▶ KOKUSAI ELECTRICの転職難易度は?職種別の応募条件や年収を解説
鉄道車両や航空機
川崎車両の鉄道車両の設計職は、法規や要求仕様に基づき、鉄道事業者や部品サプライヤなど社外の相手と協調して設計を進めます。鉄道車両の設計のきつさは、この社外の相手の多さと、法規・要求仕様に沿って設計を詰める作業にあります。
航空機の設計は、社外とのやり取りに英語が入り、構造設計・解析・試験のいずれかを受け持ちます。川崎重工の求人は、必須の欄にも英語でのコミュニケーションに抵抗がないことを入れています。
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大手にいると設計の腕は落ちるのか
大手で作図を他の人に任せていても、図面や試作品の機能チェックと製品トラブルの対処を自分で判断しているなら、job tagが機械設計のリーダーの役割に挙げる仕事を続けています。その判断まで人に任せ、指示と書類の取りまとめだけになると、経歴として書ける設計の仕事が減ります。
機械設計の昇進の流れは、若手からチームのリーダー、マネジャーの順です。マネジャーになると人員配置や資金の計画・管理が加わり、管理職のほかに機械設計のスペシャリストとして続ける進み方もあります。設計の腕を使い続けられるかは、どの進み方をとるかと、会社ごとの担当範囲で変わります。
担当範囲の広さは会社で違い、機械装置メーカーには、顧客との仕様打ち合わせから機械設計、機械の立ち上げ、試運転、メンテナンスまで設計者が受け持つ会社もあります。
求人側では、川崎重工の航空機の構造設計の求人が必須に機械設計経験を置いています。自分の担当のうち、強度や構造を自分で決めた仕事を書き出し、求人の必須にある機械設計経験に照らすと、どこまで経験として示せるかが見えます。
転職で解決する不満の見分け方

転職で解決するかは、担当や会社を替えても残る不満かで見分けられます。
- 会社の設計の進め方:強度計算や解析をせず、図面を書くだけになる(解決の手段は機械設計のまま会社を替える)
- 担当製品:待遇は良いが、担当する部品に面白みを感じない(解決の手段は担当製品の違う会社へ移る。社内なら担当を替える)
- 担当範囲・割り振り:同期の中で自分だけ業務と残業が多い(解決の手段は社内で担当を替える。替わらなければ会社を替える)
- 職種そのもの:空間認識の苦手さやミスの多さが、負荷を減らしても残る(解決の手段は設計以外の職種へ移る)
まず今の会社で担当や負荷を変えたら消える不満か考えます。消えるなら一覧の上の3項目にあたり、会社か担当を替える側です。担当や会社を替えても残るなら、4項目目の職種そのものに当たります。
2つの項目にまたがるときは、社内で変えられる手段から先に試し、それでも残れば会社を替えます。
機械設計のまま転職するときに求人で確かめること

厚労省のjob tagが示す機械設計技術者の有効求人倍率は3.14(全国)で、求人を選べる状況です。設計の手を動かせない、解析をさせてもらえない、残業が多いといった今の不満を転職先で繰り返さないために、公式の求人票を仕事内容・必須・歓迎・給与の同じ欄どうしで比べます。
担当する工程
大手の会社で設計の手を動かせなくなった人にとって、転職先が手を動かす役割か取りまとめる役割かは、仕事内容の欄に並ぶ動詞が目安になります。たとえば構想・設計・試作・評価と工程が順に並べば、最初から最後まで設計者が関わる前者に近く、調整・点検が中心なら後者に近い求人です。
作図を誰が持つかは仕事内容の欄に書かれていないことがあり、その場合は面接で聞く項目に回します。
解析の有無
図面を書くだけの仕事を避けたい人は、仕事内容に解析・シミュレーションの語があるかで先に絞れます。KOKUSAI ELECTRICは業務内容を半導体製造装置の機械設計またはシミュレーション業務(流体解析、熱反応解析、プラズマ解析など)と書いていて、設計とシミュレーションが同じ欄に並びます。
入社後に解析をする時間が実際にあるかは、求人と面接だけでは確かめにくい部分です。メーカーズジョブは求職者が無料で使えるので、面接の前に担当者を通して、配属先で解析をどれだけ受け持つかを尋ねる方法もあります。
▶ メーカーズジョブの評判は?メリット・デメリットや向いている人を解説
残業代の扱い
川崎車両のモデル年収は31歳で約750万円です。基幹職は時間外労働手当がなく、その他の職位は20時間を想定した金額です。ニデックのG3は年収577万〜606万円程度の想定で、非管理職の残業無の金額と書かれています。
同じ欄でも前提が違うため、年収を比べる前に注記で残業代が入っているかを確かめ、残業込みに揃えて比べます。
応募に必要な経験
- ニデック(小型モータ事業のメカ設計 G3-G4):必須はメカ設計の経験3年以上(G4はTOEIC600点が目安)、歓迎の欄はメカ設計5年以上、水冷製品の開発、流体解析、熱設計のいずれか
- 川崎重工(航空機の構造設計・解析・試験):必須は機械設計経験・材料力学知識・社内外調整業務経験と、英語でのコミュニケーションに抵抗がないこと、歓迎の欄はCATIA V5・FEM解析の経験など
- 川崎車両(鉄道車両の設計職):必須は高専卒以上・機械工学(強度学、材料学)の学部卒業レベルで年数の指定はなく、歓迎の欄は機械図面が読める・TOEIC450点以上
KOKUSAI ELECTRICは経験を必須に置かず、歓迎の欄に機械設計業務・産業機械の設計・2D、3D-CADの利用を挙げています。
経験を年数で測る求人と、学んだ知識で測る求人があります。年数で測る求人に応募するなら、今の担当で何年メカ設計をしているかを数えます。年数で足りなければ、川崎車両のように年数の指定がなく学んだ知識で測る求人も候補になります。
設計以外の職種へ移る選択肢

図面を引くことそのものが合わない場合は、設計の経験を応募条件に数える生産技術や品質保証などへ移る形があります。川崎重工の航空機の生産技術の募集は、歓迎条件に機械系または電気電子系職種での設計、生産技術業務の経験を挙げています。仕事内容には工程設計のほか、設計部門とのDBT(Design Build Team)活動が入っています。
▶ 生産技術はやめとけ?きついのは職種か会社か、向き不向きと次の選択肢を解説
同社の航空機の品質保証・品質管理の募集は、歓迎条件が品質保証、生産技術、品質管理、設計などの経験と、図面スペックを理解できることです。仕事内容は不具合の現品処置と再発防止、検査計画の設定です。
KOKUSAI ELECTRICの生産エンジニアは、必須条件に製造・設計・生産技術・品質保証のいずれかの業務経験を置いています。仕事は半導体製造装置の組立、試験調整、生産工程の進捗管理です。
今の会社で生産技術や品質保証へ異動できるかを先に確かめ、無ければ求人の必須・歓迎の欄に設計の経験が入っているものから当たります。
▶ 回路設計はやめとけ?きつい理由と当てはまる職場、異動や転職の判断を解説
よくある質問
機械設計に向いているのはどんな人ですか
広い範囲の知識を学び続けることが苦にならず、海外の顧客や取引先ともやり取りできる人が、機械設計に向いています。
job tagは、新卒の採用では材料力学・機械力学・流体力学・熱力学の4力学にメカトロニクス、制御工学など広い知識が求められると書いています。同じ記載は、海外の顧客や取引先とやり取りするための語学力が必要とされることも多いとしています。今の不満が向き不向きから来るのか会社から来るのかは、担当や会社を替えても残るかで見分けられます。
転職すると年収は下がりますか
下がるとは限りません。機械設計に限らない全産業・全職種の値ですが、転職入職者の賃金は前職より増えた人が40.8%、減った人が31.0%で、増えた人のほうが上回ります(令和7年雇用動向調査)。
30〜34歳は増加48.6%・減少29.0%、35〜39歳は増加43.5%・減少23.9%で、30代でも向きは同じです。
まとめ
社内で担当や負荷を変えれば消える不満なら、転職を急がず、先に社内で担当を替える選択があります。
ただし、会社の設計の進め方が原因だったり、社内では担当を替えられなかったりするなら、機械設計のまま会社を替えます。転職先の求人では、担当する工程と解析の有無を中心に、残業代の前提と応募に必要な経験も確かめます。
担当や会社を替えても残る不満なら、設計以外の職種で図面を引かない仕事に移れるかを先に調べます。

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