半導体業界はオワコン?日本の半導体の現在と今後を市場の数字で解説
社内外で「日本の半導体はもう終わった」と聞く一方、世界市場は拡大し、国は兆円規模の支援を打ち出しています。半導体の技術職や、異業種から移ることを考えているエンジニアは、どちらを信じるか迷うところです。
世界市場は縮んでいません。ただし伸びはメモリーとAI向けのロジックに偏っていて、日本は分野によって強弱が分かれます。
この記事では、市場と分野の数字で「オワコンなのか」を解説します。読み終えるころには、自分の会社の製品が伸びている側かどうかを判断できます。
半導体業界はオワコンなのか
世界の半導体市場は、直近2年とも前年を上回り、予測ではさらに大きく伸びます。
世界半導体市場統計(WSTS)が2026年6月2日に公表した春季予測によると、前年比は2024年が+19.7%、2025年が+26.2%と確定した実績で、2026年は+89.9%の予測です。
3月までの売上が前回の想定を大きく上回り、2025年12月の前回予測から5,300億ドル以上の上方修正になりました。市場規模の見通しは約1兆5112億ドルです。
ただし、伸びる年ばかりではありません。2023年は前年比-8.2%と、前年を下回りました。
製品ごとの市場の伸び
WSTSの製品区分で半導体を5つに分けると、前年比の伸び方はそろっていません。
| 製品 | 2025年(実績) | 2026年(予測) |
|---|---|---|
| メモリー | +39.0% | +249.5% |
| ロジック | +38.8% | +37.3% |
| マイクロ | +7.9% | +19.8% |
| アナログ | +8.7% | +10.2% |
| ディスクリート | -1.0% | +8.0% |
WSTSの予測から計算すると、増加額の約8割、予測の市場規模の約53%をメモリーが占めます。
増える分の中心は、大手IT企業のデータセンター投資に向けたAIサーバー用のメモリーと、GPUを含むロジックです。スマートフォンなど個人向けの電子機器は、部品不足とインフレの影響で低調です。産業用途では需要が回復しています。
表でいちばん伸びるメモリーは、2023年に前年比-28.9%まで落ち込んだ品目でもあります。その後は2年続けて大きく伸びており、年ごとの前年比の振れが大きい品目です。
半導体がオワコンと言われる理由
世界の市場が伸びているのに、なぜオワコンと言われ続けるのでしょうか。日本の半導体産業の世界シェアが大きく下がったことと、国内の市場が伸び悩んでいることが重なっているからです。
総務省の令和3年版情報通信白書によると、その世界シェアは1988年の50.3%から2019年の10.0%へ下がりました。半導体を載せる端末でも、台数で見た日本企業の世界シェアは2010年から2020年にかけて、テレビは35%から11%、ノートPCは24%から4%、スマートフォンは10%から2%になっています。
WSTSの日本市場は、世界のメーカーが日本で第三者に販売した金額で、メーカーの国籍や工場の場所とは無関係です。日本企業の売上ではなく国内の買い手の需要を表す数字なので、日本企業の勢いとそのまま重なるわけではありません。
WSTSの2026年6月公表の予測には過去の実績も載っています。日本市場はドル建てで、2023年が-2.9%、2024年が-0.0%、2025年が-4.3%と、3年続けて前年を上回れませんでした。円建てでは、直近の1年だけが前年を下回りました。
総務省の白書は、全体では日本の地位が下がったとしながら、一部の分野では日本企業が強さを保っていると結論づけています。
日本の半導体が強い分野と弱い分野
全体の世界シェアは長く下がってきましたが、分野ごとに見ると数字の向きはそろっていません。
製造装置
日本半導体製造装置協会(SEAJ)の表によると、海外拠点の分も含む日系企業の半導体製造装置の販売高は、2016年度の1兆5642億円から2025年度の5兆1986億円まで伸びました。計算すると約3.3倍です。経済産業省の資料では、半導体製造装置の国別シェアで日本は米国(35%)に続く約3割の2番手です。
SEAJが2026年7月に発表した需要予測では、2026年度は前年度比+26%の6兆5502億円です。SEAJは増える理由に、AIサーバー向けの先端ロジックへの投資と、HBMを中心にしたDRAM投資の増加を挙げています。
ただし、前年度を下回った年度が2回あります。SEAJの表から計算すると、2019年度は前年度比-7.8%、2023年度は-5.9%です。
装置は顧客の設備投資に左右されるため、強みを残す分野でも、投資が減る年度には販売高も落ちます。

画像センサー
画像センサーは、総務省の令和3年版情報通信白書によると、2001年から2020年まで金額ベースで50%と高いシェアを維持してきました。
同じ白書が分析した部品のMEMSセンサー・画像センサー・MCU・ディスクリート半導体の4種は、シェアが最も低いMEMSセンサーでも10%以上あり、部品の側にはシェアが残っています。
パワー半導体
WSTSの区分にパワー半導体だけの行はないため、近い区分のディスクリートで見ます。予測の前年比は1桁の伸びにとどまります。
SEAJは装置投資の見通しで、国内の車載とパワー半導体向けの投資が振るわないと見ています。シェアは残っていても、成長の中心はメモリーやロジックで、この分野はそこから外れています。
最先端ロジック
日本では、最先端の半導体をもう作れないのでしょうか。SEAJの2026年7月の見通しでは、2nmの最先端ロジックは量産に向けた準備の段階です。同じ見通しは、2028年度の国内向けの装置販売が、大手ファウンドリーの第二期投資、2nmロジックの量産体制の整備、メモリー投資の拡大を受けて伸びるとしています。
経済産業省の2025年9月時点の資料によると、Rapidus は2025年4月から北海道千歳市でパイロットラインの立ち上げを始めました。その前には米IBMのAlbany拠点に約150名の技術者を送り、2024年12月の国際会議IEDMでマルチしきい値電圧のGAAトランジスタを発表しています。
Rapidus とは別に、経済産業省の資料にある熊本県菊陽町のロジック工場は、主要製品が22/28nmと12/16nmで、初回出荷は2024年12月でした。同じ熊本県の次の計画も6nm・12nmなどで、2nmとはまだ距離があります。
経済産業省は Rapidus の今後の課題に、金融支援、技術開発から量産への移行、顧客の開拓の3つを挙げています。
日本の半導体は復活するのか
復活したと言える段階には、まだありません。ただ、国内で買われた半導体の額は、予測では持ち直します。円建ての日本市場は、直近の実績が約6.7兆円でした。予測では約9兆円と、3割以上増えます。
経済産業省は、国内で半導体を生産する企業の関連売上を、2020年の5兆円から2030年に15兆円超へ伸ばす目標を置いています。復活したかどうかの物差しは、この目標です。
目標に向けて、国は2024年11月の経済対策でAI・半導体産業基盤強化フレームを決めました。この枠組みは、2030年度までの7年間で10兆円以上を公的に支援し、それをきっかけに10年間で50兆円を超える官民投資を促す計画です。
目標に届くかは、目標年の実績を待つしかありません。途中経過は、国内の需要の目安として日本市場の金額と国内向けの装置販売で追えます。国内向けに売れた製造装置は、直近の年度で約1.4兆円でした。SEAJの2026年7月の見通しでは、2028年度に約2.3兆円と、国内向けで初めて2兆円を超える予測です。
技術職にとっての追い風と向かい風
AIサーバー向けのメモリー・ロジックと、その工場に入る製造装置の側には追い風が吹いています。個人向け電子機器と車載・パワー半導体の側は向かい風で、前者は部品不足とインフレの影響、後者は国内の投資の弱さが背景です。
半導体に関わる職業の求人にも、強い側と弱い側があります。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、令和7年度の全国の有効求人倍率は半導体技術者が1.07、半導体製造が0.88でした。技術者は求人が求職者をわずかに上回り、製造は1を下回って求職者のほうが多い状態です。
求人倍率は、職業ごとの今の求人と求職者の比です。
人数そのものの見込みと調査もあります。内閣府の資料では、電子情報技術産業協会(JEITA)が、今後10年に主要企業9社で4万3000人の半導体人材が必要になると見込んでいます。九州では、直近の調査で半導体企業へ就職した理工系の人材が約2,400人、企業の人材需要が約3,400人で、需要のほうが約1,000人多い状態でした。
なお、job tag の倍率では、技術者の中の研究開発や設計などの職種や、担当する製品ごとの差までは分かりません。研究開発・設計・プロセス・生産技術・品質保証のいずれの職種でも、市場の伸びが届くかは担当する製品の行き先によって変わります。
自分の会社や応募先の主力製品がどちら側にあるかは、有価証券報告書の事業の内容と売上の内訳で確かめられます。
よくある質問
半導体は今後いらなくなりますか?
公的な予測がある範囲では、半導体の需要は伸び続ける見通しです。WSTSは世界市場が2027年も前年比+26.6%伸びると予測し、SEAJは日系企業の製造装置の販売高が増え続け、2028年度は前年度比+5%の7兆7718億円になるとしています。どちらも予測で、確定した実績ではありません。
半導体業界で伸びている会社はどこですか?
社名より、何を作って誰に売っているかで見分けます。AIサーバー向けのメモリーやロジックと、その工場に入る製造装置を扱う会社が、伸びる側です。会社ごとの事業は、メーカーの一覧記事や企業研究の記事で読めます。
▶ 半導体製造装置メーカー一覧!日本の主な会社を工程別に、規模や技術職の求人も解説
半導体業界はしんどいですか?
産業が伸びているかと、仕事がしんどいかは別の問いで、しんどさは職種と担当する製品で変わります。市場が伸びる年は、立ち上げや増産の仕事が増える職種もあります。職種ごとの忙しさと会社の見極め方は、別の記事にまとめています。
▶ 半導体業界はやめとけ?そう言われる理由と当てはまる職種や会社を解説
まとめ
オワコンかどうかは、会社が何を作っているかで答えが変わります。同じ半導体でも、製品が違えば市場の動きが変わるからです。
製造装置と画像センサーには、日本の強みが残ります。製造装置の販売高は、前年度を下回った年度もあります。最先端ロジックはSEAJの見通しで量産に向けた準備の段階にあり、パワー半導体はシェアを残していても予測の増え方が小さい側です。
自分の会社や応募先の主力製品を、表のメモリー・ロジック・マイクロ・アナログ・ディスクリートの行に当てはめてみてください。納め先がAIサーバー向けなら追い風の側、車載向けなら向かい風の側にいます。