メーカーの研究開発で働いていて、テーマが止まる、上司が替わって評価が伸びなくなる、といった場面が重なる時期は、自分は向いていないのではと迷いやすい状況です。
向いていないという感覚は、才能の有無より、どこから来ているかで、社内で動くのか会社を替えるのかが変わります。
読み終えるころには、迷いの出どころを見当づけて、最初に誰へ何を相談するかを決められます。
研究開発に向いていないと感じるのは才能のせいか
向いているかは、才能だけでは決まりません。キオクシアの中途求人(先端半導体の前工程プロセスの開発)の必須要件には、仕事の中で身につける実務の力が並びます。1つめはデータ解析・課題解決の実務経験、もう1つはデバイスグループやインテグレーショングループなど社内外の複数部門と円滑に連携できるコミュニケーション能力です。
向いていないという思いは、本人の力の外からも生まれます。企業の研究は事業として行われ、担当テーマは事業の都合で変わったり止まったりするからです。
向いていないと感じる原因はどこにあるか
そう感じるきっかけは、アイデアが出ない、担当のテーマが止まる、上司が替わってから合わなくなった、会社が研究に求めるものとずれている、の4つの場面にまとまります。どの場面に当たるかで、次の動きが変わります。
経験の不足
アイデアが出ない、考察が浅いという悩みが経験の浅さから来ているかは、同期ではなく1年前の自分と、次の点を比べると見分けられます。
- 同じ種類の作業にかかる時間
- やり直しの回数
- 上司に聞く質問の質
キオクシアのメモリセルデバイス開発の求人は、半導体とは異なる製造業から未経験で転職し、5年程度でチームの中核として開発を進めている社員がいると書いています。
1年前より進んでいれば、伸びる途中にいます。ほとんど変わらないなら、年数より別の原因を疑ったほうが早いでしょう。
担当テーマ
成果が出ないときは、適性を疑う前に、テーマの条件を見ます。
事業化の見込みや期限、求められる成果物は、担当者が選んだものとは限りません。見分けの手がかりは、別のテーマなら続けられそうかという点です。続けられそうなら原因はテーマの側にあります。
どれを持たされても気が重いなら、研究の仕事そのものが合っていないことも考えます。その場合は職種を替える選択肢も出てきます。
テーマの側なら社内で変更を相談すれば変わりうるため、会社を替えるのはその結果を見てからでも遅くありません。
テーマが中止や変更になったとき、それまでに出したデータや試作、特許の出願などが評価でどう扱われるかを、評価面談で上司に聞けます。変更を相談する前に聞いておくと、判断しやすくなります。
上司との相性
上司が替わってから仕事が合わなくなったとき、研究そのものが合っていないと言い切れるでしょうか。上司が替わって評価の基準が変わったなら、仕事そのものより、評価する人との相性が原因のこともあります。
テーマも作業も同じなら、原因は相性にあると疑えます。相性は上司の交代や異動で変わりえます。社内で相談したうえで、待つ期間の区切りを決めて、その交代を待つこともできます。
会社の事業方針
研究に求めるものが、研究段階から早く製品に結びつけることか、長い期間をかけて要素技術を積むことかは、会社の事業ごとに違います。自分が考える研究とその向きが合わないと、研究の仕事が嫌いでなくても続けにくくなります。現職の会社がどちらを求めているかは、上司や評価面談で、担当テーマに何を期待されているかを聞くと確かめられます。
会社が研究に求めるものは、求人票の採用背景と組織のミッション、仕事内容の欄にも書かれます。たとえばキオクシアの先端半導体前工程プロセスの研究開発の求人は、採用背景に、まだ研究開発段階だが完成度を早期に上げて製品化したいと書いています。組織のミッションは、優れた特性の材料やプロセスを300mmウェハ上で検証し、新しいデバイスの開発に使うことです。
研究職のまま会社を替えるなら、応募先の求人でもこの3つの欄を先に読み、書かれていない点を面接で聞きます。
社内で動くときに相談する順番
最初に話す相手は直属の上司で、テーマや業務量の調整で済むかを先に確かめます。上司に話しにくい内容なら、先輩や人事のキャリア相談の窓口を使います。希望の出し方は、テーマの変更が先で、別部署への異動はその後です。
相談の前に、いつから・どのテーマで・何がうまくいかないかを書き出しておくと、テーマの問題か上司との相性かを相手と一緒に見分けやすくなります。書いたものが手元にあれば、出来事をもとに話せるからです。
大手メーカーには研究開発の隣に設計・生産技術・品質保証・分析・知的財産などの技術系部署があり、移れる部署は会社ごとに違います。まず同じ技術系の部署から考える方法があります。量産の立ち上げに関わる生産技術や品質保証も、移り先の候補になります。
▶ 生産技術はやめとけ?きついのは職種か会社か、向き不向きと次の選択肢を解説
▶ 品質保証は負け組?そう言われる理由と下に見られやすい会社の見分け方を解説
希望が通るかは、会社の制度と上司の判断で決まります。異動の時期や、社内公募・キャリア申告の制度があるかは、就業規則と人事制度の案内を読み、分からなければ人事部に聞きます。今の会社でいつまで試すかは、自分で区切りを決めておくほうが迷わずに済みます。
転職すると何が変わるか
研究職のまま会社を替えると、会社の事業方針やテーマの決まり方は変わりえます。正解が分からないまま仮説を立て直す時間は、会社を替えても残ることがあります。
研究職のまま会社を替える場合、2社の求人はどちらも、これまでの仕事の経験を応募の条件に置いています。ステラケミファの研究開発職(半導体関連)は、応募資格に理系大学の修士卒以上と、企業における化学系の研究開発の経験を挙げています。キオクシアの先端プロセスの研究開発の求人は、必須要件にデータ解析・課題解決の実務経験を挙げます。
研究の仕事そのものが合わないと感じて職種を替える場合は、技術職の統計と比べます。
各項目の値は、規模計/1,000人以上の順に並べています。
研究者
- 年収換算 802.0万円/836.9万円
- 月の超過実労働時間 8時間/8時間
電気・電子・電気通信技術者
- 年収換算 703.9万円/749.7万円
- 月の超過実労働時間 16時間/18時間
機械技術者
- 年収換算 659.0万円/745.5万円
- 月の超過実労働時間 16時間/17時間
ソフトウェア作成者
- 年収換算 578.5万円/640.9万円
- 月の超過実労働時間 12時間/16時間
出典:厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)第5表(産業計・男女計)。年収換算は、きまって支給する現金給与額×12に年間賞与を足した額で、電気・電子・電気通信技術者は通信ネットワーク技術者を除いた値です。
研究者は職種小分類の値で、半導体の研究開発職だけを集計したものではありません。職種ごとの平均どうしの比較で、移った本人の変化を表す値とも違います。応募先の残業時間は、求人票と面接で分かります。
ソフトウェア作成者は平均年齢(規模計)が37.1歳で、研究者の42.5歳、機械技術者の42.3歳、電気・電子・電気通信技術者の42.1歳より5歳ほど若く、年収換算は4職種で最も低くなっています。
職種を替えるときの目安として、1,000人以上で比べると、研究者は年収換算が4職種で最も高く、超過実労働時間は一覧の技術職3種の半分以下です。
▶ 設計開発はやめとけ?きつい理由と研究開発との違い、職種か会社かの見分け方を解説
▶ 製造業の年収はいくら?平均と年齢や業種、企業規模、職種による差を解説
よくある質問
研究開発はどのような人が向いていますか?
部門をまたいで課題解決を主導した経験は、求人で条件に挙げられています。キオクシアのメモリセルデバイス開発の求人では、歓迎要件に、プロセス開発・回路設計・信頼性保証など複数の関係部門と連携し、課題解決を主導した経験を挙げています。これは1社の求人の記載で、研究開発職全体の条件ではありません。
自分と比べるときは、性格より、ここまでの仕事で複数の部門と連携して課題解決を自分が主導した経験があるかを見ます。
体調を崩しているときは休職を考えてもいいですか?
眠れない・出社がつらいなど体調を崩しているときは、原因探しや異動の相談より先に、休むことを考えてかまいません。
休職できる条件や期間は会社ごとに決まりがあり、就業規則で確かめられます。相談先は上司・人事・産業医です。
相談するときは、眠れない・つらいといった今の状態をそのまま伝えれば足ります。体調の判断は自分ひとりで下さず、医療機関に任せます。
▶ 機械設計でうつになりそう、ついていけないのは能力不足?見分け方と相談先を解説
まとめ
迷いが出たら、まず出どころを分けます。経験の浅さなら年数で埋まる部分があり、テーマが原因なら先に社内で相談します。上司との相性なら、区切りを決めて待つこともできます。
会社の事業方針が合わないときは、研究職のまま会社を替える方法があります。職種を替えるのは、どのテーマを持たされても気が重く、研究の仕事そのものが合っていないと感じるときです。
次にすることは、迷いの出どころを1つ決めて、最初に相談する相手を決めることです。


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