源泉徴収票の額を製造業の平均年収と比べようとすると、統計や数え方によって500万円台前半から570万円台まで数字が分かれ、どれを自分に当てるかで高いか低いかの答えが変わります。
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査で製造業の年収を月給×12+賞与で出すと553.6万円で、全産業とほぼ同じ水準です。研究開発や設計の技術職が比べる相手は、年齢・学歴・企業規模をそろえた数字です。
年齢・学歴・企業規模・職種ごとの公的統計と並べれば、自分の年収の位置を判断できます。年収を上げる動き方と、候補企業の有価証券報告書での確かめ方も解説します。
製造業の平均年収はいくらか

厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査には年収の項目がないため、2025年6月の月額36.65万円を12倍し、前年1年間の賞与113.79万円を足して換算します。製造業は553.6万円、産業計は545.6万円です。
- 賃金構造基本統計調査(月額×12+年間賞与) 553.6万円(残業代を含む)
- 賃金構造基本統計調査(所定内給与×12+年間賞与) 509.8万円(残業代を除く)
- 国税庁 民間給与実態統計調査(令和7年分) 573.0万円(1年間勤めた人の実額。パートなども含む)
残業代の有無で43.8万円ずれます。源泉徴収票の支払金額は残業代と賞与を含むので、月給×12+賞与の数字と並べます。
賃金構造基本統計調査は、短時間労働者を除く一般労働者のうち、10人以上の民営事業所に勤める人だけが対象です。
ここまでは学歴を分けない平均です。学歴で分けると、製造業の高校卒は505.1万円、大学卒は656.2万円で、151.1万円の開きがあります。学歴が違えば、比べる相手も変わります。
製造業の年収は低いのか
国税庁の業種別の平均給与と賃金構造基本統計調査は対象と計算方法が違うため、順位は直接比べられません。製造業の年収は低いという評判とは逆に、国税庁では14業種中5位で全業種の平均を上回り、賃金構造基本統計調査では産業計と同水準です。
| 業種(国税庁の区分) | 令和7年分の平均給与 |
|---|---|
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 854.4万円 |
| 金融業・保険業 | 725.6万円 |
| 情報通信業 | 681.9万円 |
| 建設業 | 590.3万円 |
| 製造業 | 573.0万円 |
| 全業種の平均 | 486.6万円 |
※国税庁 令和7年分民間給与実態統計調査(2026年9月公表)。14業種のうち上位5業種と全業種の平均です。
賃金構造基本統計調査の月額では、製造業の所定内給与はフルタイムで働く人全体の月34.1万円を下回ります。年間賞与は全体の101.0万円より多めです。
低いという評判に近い数字は、製造業の中の一部の業種と小さな会社に出ます。賃金構造基本統計調査の中分類では、食料品や繊維工業の月給×12+賞与の年額が、製造業全体の平均を大きく下回ります。企業規模別でも、従業員10〜99人の会社は427.1万円です。自分の位置は、勤め先の業種と規模の区分の数字で確かめます。
年齢別の年収

賃金構造基本統計調査で月給×12+賞与の年収換算にすると、製造業は30〜34歳で501.1万円、40〜44歳で605.0万円です。大学卒と大学院卒に絞ると、どちらの年齢でもこれより高くなります。
| 年齢 | 大学卒 | 大学院卒 |
|---|---|---|
| 25〜29歳 | 461.6万円 | 572.1万円 |
| 30〜34歳 | 528.4万円 | 707.8万円 |
| 35〜39歳 | 606.0万円 | 803.5万円 |
| 40〜44歳 | 685.7万円 | 963.8万円 |
| 45〜49歳 | 748.9万円 | 1,050.5万円 |
| 50〜54歳 | 794.5万円 | 1,134.6万円 |
設計や研究開発の技術職の目安として、表の大学卒か大学院卒の列が使えます。大学卒は50〜54歳まで年齢が上がるたびに伸び、25〜29歳から40〜44歳にかけては200万円以上高くなります。大学院卒は伸び幅がさらに大きく、40〜44歳では大学卒との開きが278.1万円になります。
ただし、表の数字は平均です。学歴を分けない製造業の所定内給与の月額は、中位数が29.45万円で、平均の33万円を下回ります。平均より下にいる人のほうが多い分布です。
自分の所定内給与の月額が平均に届かなくても、真ん中の人より上に立っている場合があります。
技術職の年収

製造業全体の平均には工場の現業職も含まれるため、技術職の年収は職種で絞った数字のほうが仕事の中身に近い値になります。次の賃金構造基本統計調査の値は全産業の技術者をまとめたもので、メーカーだけの数字ではありません。大手は従業員1,000人以上、中堅は100〜999人の会社です。
- 研究者 年齢計802.0万円、40〜44歳は規模計881.0万円(大手926.0万円/中堅823.2万円)
- 機械技術者 年齢計659.0万円、40〜44歳は規模計738.5万円(大手851.0万円/中堅686.7万円)
- 電気・電子・電気通信技術者 年齢計703.9万円、40〜44歳は規模計825.5万円(大手885.5万円/中堅756.4万円)
- 化学技術者 年齢計641.7万円、40〜44歳は規模計696.3万円(大手819.3万円/中堅622.5万円)
- 輸送用機器技術者 年齢計725.4万円、40〜44歳は規模計803.7万円(大手878.7万円/中堅686.7万円)
設計職や生産技術職、品質保証は職種の小分類に区分がなく、社内SEも製造業の社内SEだけをまとめた区分はありません。
研究者
30〜34歳で661.1万円だった研究者の平均は、35〜39歳には763.2万円と102万円ほど上がります。年齢計でも、上の一覧に並ぶ職種の中で研究者が最も高くなっています。
一方、会社の規模による差は、上の一覧のとおりほかの4職種より小さめです。
機械技術者
機械系の設計職や生産技術職が自分の年収を照らし合わせる先は、上の一覧の機械技術者です。電気系の設計であれば、見る先は電気・電子・電気通信技術者に移ります。
機械技術者の年齢計は5職種で下から2番目ですが、30代後半に入ると勤め先の規模で大きく分かれます。35〜39歳の平均は大手が785.0万円、中堅が639.5万円で、145.5万円離れています。
電気電子技術者
30〜34歳の時点で、電気・電子・電気通信技術者の平均は668.2万円と、機械技術者を76.2万円上回っています。
平均では40代前半で頭打ちになり、45〜49歳の平均は830.5万円と、40〜44歳から5.0万円しか増えません。
化学技術者
化学技術者は年齢計が5職種で最も低く、40代前半の大手と中堅の差は一覧の5職種でいちばん大きくなっています。
40代後半の伸びは小さく、45〜49歳の平均は701.0万円で、40代前半からほとんど増えません。
輸送用機器技術者
25〜29歳の541.4万円から45〜49歳の873.1万円まで、輸送用機器技術者の年収は年齢を重ねても伸び続けます。40代で伸びが止まる電気系や化学系の技術者とは動き方が違います。
会社の規模による開きも年齢とともに広がり、45〜49歳の大手と中堅の差は200.7万円になります。
年収が高い業種

化学・自動車・半導体のどの業種が高いかは、製造業の中分類で見えます。
- 化学工業 681.0万円(大手805.3万円)
- 石油製品・石炭製品 670.9万円(大手732.0万円)
- 情報通信機械器具 664.3万円(大手753.0万円)
- 鉄鋼業 646.0万円(大手817.8万円)
- はん用機械器具 632.8万円(大手781.5万円)
- 輸送用機械器具 631.2万円(大手744.6万円)
- 業務用機械器具 625.3万円(大手722.0万円)
- 電子部品・デバイス・電子回路 602.7万円(大手743.5万円)
- 非鉄金属 598.5万円(大手731.8万円)
- 電気機械器具 589.8万円(大手758.2万円)
- 生産用機械器具 586.4万円(大手800.5万円)
- ゴム製品 561.1万円(大手689.1万円)
- 窯業・土石製品 526.9万円(大手684.0万円)
- 飲料・たばこ・飼料 521.3万円(大手677.1万円)
- その他の製造業 521.2万円(大手674.5万円)
- プラスチック製品 503.2万円(大手682.8万円)
- パルプ・紙・紙加工品 483.4万円(大手626.3万円)
- 金属製品 481.1万円(大手627.8万円)
- 印刷・同関連業 471.3万円(大手618.1万円)
- 家具・装備品 465.7万円(大手637.8万円)
- 木材・木製品 436.8万円(大手525.0万円)
- 食料品 417.7万円(大手474.8万円)
- なめし革・同製品・毛皮 380.0万円(大手417.3万円)
- 繊維工業 378.2万円(大手617.5万円)
※令和7年賃金構造基本統計調査の産業中分類(学歴計・年齢計の年収換算)によります。規模計の高い順です。自動車・部品は輸送用機械器具、半導体のデバイス製造は電子部品・デバイス・電子回路、製造装置は生産用機械器具に入ります。
規模計では化学工業681.0万円が最も高く、自動車の輸送用機械器具は631.2万円、半導体の電子部品・デバイス・電子回路は602.7万円です。大手に限ると、自動車と半導体の差は1万円ほどしかありません。
規模計の年収換算が580万円を超える、化学工業から生産用機械器具までの11業種を見ると、大手どうしなら722.0万〜817.8万円に収まり、上下の幅は95.8万円です。
同じ業種の中で大手と100〜999人の中堅を比べると、電子部品・デバイス・電子回路が234.0万円、電気機械器具が226.2万円、輸送用機械器具が201.5万円開きます。この3業種ではどれも業種間の幅の2倍以上です。
この3業種では、業種を選び直すより、同じ業種の中で会社の規模を上げるほうが平均の年収は大きく動きます。
企業規模別の年収

統計の企業規模の区分では、300人以上の会社も100人台の会社も同じ100〜999人の中堅に入ります。
- 製造業全体(年齢計) 大手712.9万円、中堅521.8万円
- うち年間賞与 大手174.4万円、中堅104.7万円
- 大学卒・40〜44歳 大手879.5万円、中堅634.4万円
- 機械技術者(産業計・年齢計) 大手745.5万円、中堅610.4万円
- 東京の製造業(年齢計) 大手864.2万円、中堅563.9万円
※令和7年賃金構造基本統計調査(年収換算)。機械技術者の行は職種別の表で産業計、東京の行は都道府県別の表の値です。
中堅は大手より年収換算が年齢計で191.1万円低く、産業計の大手と中堅の差131.0万円より大きな開きです。製造業は産業計より規模による違いが大きい業種です。
大学卒の40〜44歳に絞ると開きは245.1万円で、年齢計より広がります。東京の製造業では300.3万円です。
大手と中堅の差は年齢の違いではありません。平均年齢は大手が43.1歳、中堅が43.5歳でほぼ同じで、開きは月給と賞与の両方から来ています。残業代を含めて毎月決まって支払われる給与は44.87万円と34.76万円です。年間賞与も月給の約3.9か月分と約3.0か月分で、大手のほうが厚く出ています。
10〜99人の会社の賞与は月給の約2.0か月分で、中堅の約3.0か月分をさらに下回ります。
年収を上げる方法

年収を上げる手段はいまの勤め先が中堅か大手かで変わり、業種を変えることは年収の決め手になりにくいです。
大手に移る
中堅から大手へ移ると、職位が一段下がっても平均の水準は上です。賃金構造基本統計調査で製造業の雇用期間の定めのない人を比べると、課長級の平均は中堅で813.0万円、係長級の平均は大手で923.6万円です。職位が違うため、平均年齢も同じではありません。
ただし、会社を変えると等級が付け直され、昇格の時期が遅れることがあります。
移った先の等級制度と昇格の時期は、求人票と面接での確認事項です。
業種を変える
規模計上位11業種の大手どうしなら水準が近く、業種を変えても年収はあまり動きません。
一方、業種を選ぶ基準は扱う製品の先行きで、主力製品の受注が減っている業種にいるなら、それが移る理由です。
管理職に上がる
すでに大手にいる人は、役職別の表で課長級と係長級の年収を比べられます。
| 役職(製造業) | 規模計 | 1,000人以上 |
|---|---|---|
| 部長級 | 997.7万円 | 1,388.1万円 |
| 課長級 | 879.7万円 | 1,165.6万円 |
| 係長級 | 708.9万円 | 923.6万円 |
※令和7年賃金構造基本統計調査 役職第1表(製造業・雇用期間の定め無し・学歴計・年収換算)
大手の課長級は係長級より242.0万円高い額です。これは平均どうしの比較で、製造業の1,000人以上では平均年齢が課長級49.9歳、係長級46.2歳と4歳近く離れるため、差には年齢の違いも含まれ、課長に上がった人の増加額ではありません。
課長に上がる時期は、自社の人事制度で等級ごとの滞留年数と直近の昇格事例を確かめます。
候補企業の平均年収の調べ方

候補企業の年収を調べる資料は、有価証券報告書と公式求人の2つです。
まず有価証券報告書の従業員の状況の欄で、平均年間給与と平均年齢を控えます。金額は提出会社単体の従業員の平均で、管理職も含みます。ニデックなら対象は単体の1,786人で、連結の約10万人とは範囲が違います。
社名にホールディングスが付く持株会社では、本社の社員だけの数字になることがあります。社名のリンク先は、各社の転職難易度を解説した記事です。
- TOWA 平均年間給与738.7万円(平均年齢39.2歳)
- ステラケミファ 平均年間給与731.8万円(平均年齢39.5歳)
- 川崎重工 平均年間給与910.2万円(平均年齢41.7歳)
- ニデック 平均年間給与822.5万円(平均年齢43.7歳)
- キオクシア 平均年間給与941.6万円(平均年齢44.0歳)
転職して受け取る額の見当は、公式求人でつけます。想定年収は等級や条件とセットで見ます。ニデックでは、非管理職で残業なし・評価中位の等級G4が744万円程度です。
そのうえで2つを並べ、差の中身を読みます。ニデックの822.5万円と744万円の間には78.5万円の差があります。有価証券報告書は全社員の平均、求人は等級ごとの額なので、どちらが高いかは会社と年齢で変わります。
TOWAとキオクシアは平均年齢が4.8歳違い、有価証券報告書の額どうしは同じ年齢の比較になりません。求人票には年齢ごとのモデル年収が載ることがあり、川崎重工なら31歳約750万円、36歳約960万円です。候補どうしは、自分の年齢と等級に近い求人の額で比べます。
よくある質問
年収600万円は製造業の中で高いほうですか
製造業全体の平均553.6万円より上ですが、年齢と会社の規模をそろえて比べると高いとは限りません。製造業の大学卒は、規模計なら35〜39歳で606.0万円、大手なら30〜34歳で627.5万円に達するからです。
30代前半で600万円なら規模計の同年代より上にいますが、大手の同年代にはまだ届いていません。
年収1,000万円に届くのはどんな人ですか
大手の製造業では、統計の平均で1,000万円を超える層がいくつかあります。たとえば次の3つです。
- 課長級:1,165.6万円
- 大手の大学院卒の40〜44歳:1,029.8万円
- 大手の大学卒の50〜54歳:1,000.9万円
勤務地で年収は変わりますか
地域の差はありますが、愛知の中で見ても会社の規模による差のほうが大きくなります。
| 地域 | 製造業の年収換算(規模計) |
|---|---|
| 関東 | 東京676.7万円、神奈川690.3万円 |
| 東海 | 愛知601.1万円、三重560.7万円 |
| 関西 | 大阪572.1万円、兵庫605.9万円 |
関東の東京・神奈川が高く、愛知は東京より75.6万円低い水準です。愛知の中で比べると、大手が728.0万円、中堅が533.8万円で、その開きは194.2万円と、愛知と東京の年収差の2倍を超えます。関西の大阪と兵庫も、東京より低い水準です。
まとめ
自分の年収の位置は、製造業全体の平均と比べても見えてきません。年齢・学歴・職種・企業規模で数字が大きく変わるからです。
賃金構造基本統計調査では、年齢・学歴・企業規模、技術職なら職種の区分も、自分に当てはまるものを選び、まずその数字と今の額を並べてください。課長に上がるかどうかでも、年収の水準は変わります。
大手へ移るなら、候補企業の有価証券報告書の平均年間給与が材料になります。公式求人の想定年収と突き合わせます。残って管理職を目指すなら、材料は自社の等級と昇格の時期になります。

