求人票に生産技術と製造技術が並び、どちらに応募するか迷っている技術職の方へ。公式の求人には、製造技術の募集に新規装置の立ち上げが入り、生産技術の募集に生産性や品質の改善が入る会社があります。
よく使われる区別は、生産技術が量産までの立ち上げ、製造技術が量産が始まってからの改善です。ただし会社ごとに中身が違うため、職種名より業務欄の語と必須要件欄を手がかりに見分けます。
生産技術と製造技術の違い
よく使われる説明では、生産技術は新製品を量産できる状態まで立ち上げる仕事、製造技術は量産が始まったラインを安定させて手を入れていく仕事です。厚生労働省の職業資料では、製造技術にあたる職務を製造技術設計と呼び、製品を製造するために必要な技術的条件を整える、最も製造現場に近い仕事として生産技術の分類の1つに含めています。
よく使われる説明
- 生産技術: 新製品を量産できる状態まで立ち上げる
- 製造技術: 量産が始まったラインを安定させ、改善する
職業資料での位置
- 生産技術: ①生産システム・生産工程の設計 ②生産設備の企画・設計・改良・保全 ③加工法・加工手順の設定、金型・治工具の設計、時間研究・作業改善策定
- 製造技術: ③にあたる製造技術設計として、生産技術の中に置かれる
よく使われる説明は製造技術を量産後の改善として生産技術と分けますが、資料は製造技術にあたる職務も生産技術の分類に含めます。根拠の1つは一覧の②で、量産後の改善とも読める生産設備の改良と保全が、資料では生産技術者の仕事に数えられています。
工場やライン全体を受け持つか個別の工程を受け持つかで分ける範囲の切り方もあり、こちらに従えば同じ改善でもライン全体の見直しなら生産技術、個別の工程の手直しなら製造技術の側です。
メーカー各社の生産技術と製造技術の分け方
会社によって、同じ生産技術や製造技術という職種名が別の仕事を指します。電子部品・半導体・重工・機械加工と事業や工場の違う4社で、設備をつくる仕事と製造技術と名のつく仕事が、どの区分や募集名に置かれているかを公式採用サイトの職種紹介と公式求人の記述で並べます。村田製作所の項目は採用サイトの職種紹介が根拠で、個別の求人票ではありません。
村田製作所(電子部品)
- 設備: 設備開発・設備製造・工法開発(区分は生産技術・工法開発)
- 製造技術: 新規技術の量産立ち上げから量産品の品質改善(区分は製造)
- 置き方: 区分が別々
キオクシア(半導体)
- 設備: 生産技術区分の装置の募集は、装置メーカーへ要求仕様を出す発注側
- 製造技術: 新規装置の立ち上げ評価・プロセス条件の決定・歩留まり向上(区分はプロセス技術・デバイス技術)
- 置き方: 製造技術と名のつく募集が別の区分に入る
川崎重工(重工)
- 設備: 生産技術の募集名の中に、設備・治具の仕様検討と導入立ち上げが並ぶ
- 製造技術: 航空機と油圧機器の求人とも募集名は生産技術で、職種欄に製造技術の語が入る
- 置き方: 職種欄の区分名は、製造技術・生産技術・生産設備保全をひとまとめにした名前
フェローテック(機械加工の工場)
- 設備: 設備導入と自動化・省人化の企画が同じ求人に入る
- 製造技術: 加工条件の最適化・工程改善・新規製品の量産立ち上げ(製造技術課長の求人)
- 置き方: 製造技術と名のつく管理職求人に立ち上げと設備が入る
村田製作所
滋賀地区の新卒向けの職種紹介(一般職採用)では、生産や検査にかかわる設備を社内で製作する職種が書かれています。設備の設計から製作、納期管理、工場での立ち上げまでが、同じ職種の中で続いています。
村田製作所の区分には、生産技術と製造のほかに、生産ライン設計・改善(IE)があります。新しい生産ラインを企画・設計・改善する職種は、生産技術の区分ではなく、こちらに入ります。
キオクシア
キオクシアの生産技術区分の募集は、配属先が、四日市の新工場の建設・インフラ設計から生産装置の設計開発と能力管理・立ち上げを担当する部門です。製造技術と名のつく募集は別の区分にあり、後工程の求人の採用背景に、新規装置の立ち上げや試作・量産ラインづくりの増加が書かれています。
装置の立ち上げは、生産技術の区分の配属先にも、製造技術と名のつく募集にも出てきます。ただし、プロセス条件の決定は、製造技術と名のつく募集に書かれた仕事内容です。
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川崎重工
川崎重工の航空機の求人は新機種設備の導入・立ち上げを、油圧機器の求人は新製品の量産工程づくりを、仕事内容に挙げています。職種欄の区分名には製造技術が含まれますが、募集名はどちらも生産技術なので、募集名の語だけで探すと漏れる求人です。
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フェローテック
フェローテックの製造技術課長の求人は、扱う製品が半導体製造装置向け真空チャンバー部品など高精度の機械加工部品で、加工条件の最適化から設備導入や自動化の企画までが同じ求人に入っています。
この1件の置き方が同じ業種の別の会社にも当てはまるとは限らないため、その会社の求人の職種欄と業務欄を並べて読みます。
求人票の業務欄の読み方

川崎重工の求人票では、職種欄の下に仕事内容の欄があり、業務が箇条書きで並びます。この欄を業務欄と呼び、職種名と並べて読みます。
業務欄の読みどころは、よく使われる区別での分類と、その語が出ていた求人の職種名が食い違う項目にあります。
並びは、業務欄の語、分類、実際の職種名の順です。
- 工場/製造ライン設計・工程設計 → 生産技術 → 航空機の生産技術(川崎重工)
- 生産設備の仕様検討、導入 → 生産技術 → 油圧機器の生産技術(川崎重工)
- 装置メーカーへ要求仕様を定義 → 生産技術 → 製造装置開発・生産設備仕様設計(キオクシアの生産技術区分の募集)
- 新規装置の立ち上げ評価、導入仕様(プロセス条件)の決定 → 生産技術 → 製造技術エンジニア(キオクシアの半導体後工程の募集)
- 新規製品の量産立ち上げ、生産準備、工程設計 → 生産技術 → 製造技術課長の管理職求人(フェローテック)
- 生産性、品質向上、リードタイム(LT)短縮などの改善 → 製造技術 → 航空機の生産技術(川崎重工)
- 歩留まり向上、治具改良 → 製造技術 → 製造技術エンジニア(キオクシアの半導体後工程の募集)
- 装置のトラブル要因を特定 → 製造技術 → 製造技術最適化(キオクシアの量産前工程の募集)
立ち上げの語が製造技術と名のつく求人に、改善の語が生産技術の募集名の求人に出ている項目があります。
川崎重工の航空機の求人は、同じ業務欄に工程設計の語と改善の語が並びます。どの業務を受け持つかが業務欄だけでは分からないので、応募先には、担当する工程と、立ち上げと改善のどちらに時間を割く仕事かを質問します。
自分の経歴に合うのはどの求人か

応募できるかの手がかりは、求人の必須要件に書かれた業務の経験です。
キオクシアの生産技術の募集
- 必須要件: プロセス装置の生産設備設計・仕様検討・設備導入、または製造ライン立ち上げの実務経験
- 対象: 半導体前工程かクリーンルーム内に限る
フェローテックの製造技術の管理職求人
- 必須要件: 機械加工メーカーでの製造技術の経験、機械加工工程の改善や生産体制づくりを主導した経験、管理職としての組織マネジメント経験
- 対象: 管理職が前提
川崎重工の油圧機器の募集(経験者枠)
- 必須要件: 製造業での業務経験3年以上、かつ生産技術の経験2年以上
キオクシアの量産前工程の募集
- 必須要件: 製造業での生産技術と製造技術に関する業務の経験
- 対象: 製品・業種は問わない
キオクシアの半導体後工程の募集(担当者クラス)
- 必須要件: 製造業での製造技術・プロセス開発・生産技術・装置開発・装置の保守・製造のいずれかの経験
- 対象: 製造業全般
川崎重工の航空機の求人
- 必須要件: 製造業での技術系業務の経験、または航空機整備の経験が3年以上
- 対象: 職種を限らない
川崎重工の油圧機器の募集(未経験ポテンシャル枠)
- 必須要件: 業務の経験は問わない(技術系職種の未経験でも応募できる)
- 学歴ほか: 高専卒以上(機械・電気系)と人柄の条件
年収のほうは、キオクシアと川崎重工の求人では職種名で分かれません。キオクシアは、生産技術と製造技術のどの募集も想定年収の幅が550万〜1260万円で、川崎重工は、航空機と油圧機器のどちらの求人も年収が560万〜870万円です。
立ち上げを担当してきた人
立ち上げの経歴で応募先を探すとき、生産技術の求人だけに絞ると漏れます。キオクシアの後工程の製造技術エンジニアは新規装置の立ち上げ評価を、フェローテックの製造技術課長は新規製品の量産立ち上げを、仕事内容に挙げています。
キオクシアの生産技術の募集は、半導体のほか液晶や精密電子部品のクリーンルームで装置を入れてきた経歴も対象にしています。クリーンルームの外でラインを立ち上げてきた経歴は、この募集には当てはまりません。
量産中の改善を担当してきた人
キオクシアの半導体後工程の募集は、必須要件が製造技術・生産技術などのいずれかの経験なので、改善の経歴だけでも応募先に残ります。
この募集は、SPC・シックスシグマを使った製造プロセスの改善経験も歓迎要件です。
ただし、後工程の募集もリーダー・スペシャリストクラスになると、半導体製造工程での製造技術かプロセス開発の経験に絞られます。この後工程の募集では、半導体以外の量産工程で改善を続けてきた場合の応募先は担当者クラスです。
年数の条件がつく求人では、もう一段の確認が要ります。川崎重工の油圧機器の経験者枠は、製造業での年数に加えて生産技術の経験年数を指定しています。改善に充てた年数をそこに数えてよいかは記載からは読めないため、職務経歴書には、改善を担当した年数と、その間の担当工程を分けて書いておきます。
別の技術職から移る人
設計や品質保証など別の技術職から移るなら、川崎重工の航空機の求人は、職種を限らない技術系業務の経験3年以上を求めるので、生産技術の経験がなくても応募できます。歓迎要件には、機械系または電気電子系職種での設計を、生産技術の業務と並べて入れています。
業務の経験を問わない油圧機器の未経験ポテンシャル枠では、生産技術職が初めての人向けに、先輩社員による長い期間のOJT教育が予定されています。仕事内容には電気回路設計、PLC(ラダープログラム)等のソフト編集も並びます。回路やラダーを書いてきた設計職なら、その経験は仕事内容とそのまま地続きです。
まとめ
生産技術と製造技術の求人は、職種欄、業務欄の語、必須要件欄の順に読みます。会社ごとに指す仕事が入れ替わり、設備をつくる側にも量産中の工程を受け持つ側にも同じ職種名が付くからです。
そのため、業務欄に並ぶ語で生産技術寄りか製造技術寄りかを見分け、必須要件欄に書かれた業務と自分がこれまで受け持ってきた業務を突き合わせると、応募できる求人が残ります。
求人票の欄からは、職種の業務と応募の条件まで読み取れます。求められる力と学歴、今の会社に残るか動くか、大手の応募要件と転職が難しくなる場面は、下の記事で読めます。
▶ 生産技術は頭が悪い?言われる理由と求められる力、学歴の影響を解説

