立ち上げの出張や納入先からの呼び出しが続くと、これは装置メーカーの技術職なら普通のことなのか、自分の会社だけなのかが気になります。内定の条件に書かれた残業時間を見て、入社してよいか決めかねている人もいます。
装置メーカーの忙しさは、会社が公表する月平均の残業時間だけでは分かりません。納入先の日程に左右されることがあるうえ、出張や転勤の多さは、職種や求人によって書かれ方が違います。
この記事では、公式資料と求人の記載をもとに、出張や転勤が多い職種、今の忙しさを続けるか移るかの判断、応募先で確かめる点を解説します。
半導体製造装置メーカーは激務なのか
激務かどうかを会社の公表値で見ると、装置メーカー2社が出している月平均の所定外労働は20.8〜32時間です。機械技術者・電気電子技術者の統計(規模計16時間・1,000人以上は17〜18時間)より長めに見えますが、対象と年度が違うため、そのまま比べることはできません。
- 東京エレクトロン(サステナビリティのページ) 月平均の所定外労働 32時間(日本・2024年度)
- KOKUSAI ELECTRIC(公式資料) 月平均の所定外労働 20.8時間(採用サイトに『2025年3月31日時点』の注記があり、集計範囲の明記なし)
- TOWA(ESGデータ) 1人当たり総労働時間 年2,019時間(単体・2025年度、2024年度は1,967時間)
- 東京エレクトロン宮城の公式求人 平均月残業 35時間~45時間程度(求人票の記載・2026年10月取得)
- 賃金構造基本統計調査(厚生労働省) 機械技術者・電気電子技術者 月16時間(産業計・規模計・令和7年、1,000人以上は17時間・18時間)
- 毎月勤労統計調査(厚生労働省) 製造業の一般労働者 月14.7時間(事業所規模5人以上・令和7年分)
※所定外・時間外・残業の呼び名と、範囲・年度は、資料ごとに違います。
東京エレクトロンでは、サステナビリティのページの月平均32時間に対し、宮城の公式求人は平均月残業を35時間~45時間程度と記載していて、数字の上では求人の記載のほうが大きくなっています。TOWAは年間の総労働時間で公表しているため、2,019時間を月の残業に換算することはできません。
▶ 製造業の残業時間の平均は?月40時間が多いかを規模や職種で比べて解説
会社の月平均は、忙しい月と落ち着いた月をならした値です。平均では、特定の職種がどの月に忙しくなるかは分かりません。数字だけで激務かどうかは決められず、職種と時期を分けて見る必要があります。
装置メーカーの忙しさはどこから来るのか
立ち上げや不具合への対応は、納入先の日程に合わせて動く仕事です。
東京エレクトロンFEのフィールドエンジニア求人の仕事内容の欄には、『国内外のお客さま工場へ納入した半導体製造装置の立ち上げから、装置メンテナンスや装置トラブルの対応、…』とあります。
同じ求人は、大きな不具合が生じた際の対応を『自ら装置の分析・解析を行い、専門領域のエンジニアと協力して解決策を講じます』と記しています。
出張や転勤が多いのはどの職種か
納入先の日程に合わせて動く仕事は、出張や転勤の記載にも表れます。求人の記載から読める範囲では、東京エレクトロンの技術系の求人で出張や転勤が目立つ職種は、フィールドエンジニアです。東京エレクトロンFEのフィールドエンジニア求人は、勤務地の欄に『※国内外の出張や転勤が多数発生します』とあります。
宮城では、フィールドエンジニアの求人が応募の条件に出張(海外を含む)や将来的な転勤の可能性を挙げています。一方で、同じ宮城の設計・プロセス・品質保証の求人は、勤務地が宮城県の拠点で、本文に出張や転勤の記載が見当たりません。求人に書かれていないことは、忙しさが軽いことを意味しません。
▶ プロセスエンジニアは激務?半導体の残業と化学プラントとの違い、続けるかの判断を解説
今の忙しさは納入先の都合か会社の問題か
納入先の都合には、立ち上げの時期に集まる山と、担当する納入先や機種についてくる忙しさの2つの形があります。今の忙しさがどこから来ているかで、続けるか移るかの判断が変わります。

立ち上げが終われば落ち着く
時期の山かどうかは、時間外労働の上限を手がかりに見分けられます。上限は原則月45時間で、労使が合意した場合でも、この時間を超えてよい月は年6か月までです。
上限の対象は法定外労働時間で、求人の平均月残業や会社が公表する所定外の時間とは数え方が違います。新技術・新商品などの研究開発業務は適用除外のため、その場合は上限を手がかりにできません。
忙しさが新機種や納入先の立ち上げの数か月に集まり、終わると定時近くに戻るなら、山は立ち上げの日程で決まっています。過去1年で上限を超えた月を数えると、この形かどうかを確かめられます。
超えた月が立ち上げの時期と重なっていれば、次の山がいつ来るかと、その後に落ち着く月があるかを上司に確かめて、続けて様子を見られます。
トラブル対応の呼び出しが続く
トラブル対応の呼び出しが、担当する納入先や機種についてくるなら、同じ職種のまま別の装置メーカーに移っても、呼び出しがなくなるとは限りません。納入先はまた半導体メーカーの工場だからです。
先に打つ手は、社内で担当する納入先や機種、職種そのものを変える相談です。
落ち着いた時期も帰りづらい
立ち上げのない月にも帰りづらいなら、出どころは納入先の日程ではなく、職場の空気と仕事の割り振りかもしれません。この忙しさは、会社を移ると変わりえます。
ただし、移った先が同じ形のこともあります。入社前に山のない月の帰宅時間を確かめておくと、納入先の日程と関係なく続く忙しさがあるかどうかが分かります。
応募先の忙しさは何を見れば分かるか
次の会社の忙しさは、入社してからではなく、応募の前は求人票の欄で、内定を承諾するまでは面接で確かめられます。ただし、休日の対応のように、求人票の欄に載らない項目もあります。

平均残業の欄
東京エレクトロン宮城の公式求人は、プロセスエンジニアも品質保証もフィールドエンジニアも、平均月残業を同じ幅で記載しているため、この欄では職種どうしを比べられません。
東京エレクトロンFEのフィールドエンジニア求人は書き方が別で、時間外の欄は『所定時間外労働 有』だけです。
出張の条件
出張や転勤の記載は、求人名に入る場合と、応募の条件や専用の項目に入る場合があります。
- 東京エレクトロンFE フィールドエンジニア(熊本) 国内外出張・転勤あり(求人名と勤務地の欄)
- 東京エレクトロンFE フィールドエンジニア(熊本・海外駐在候補の求人) 海外駐在候補(求人名)
- 東京エレクトロン(宮城)フィールドエンジニア 出張(海外を含む)や将来的な転勤が苦にならない方(応募の条件)
- 東京エレクトロン(宮城)事業企画 出張に抵抗がないこと/出張:有(国内~海外)。書いてある場所は応募の条件と出張の項目
海外を含む出張か、将来の転勤か、駐在かで、家族の予定や住まいへの影響は同じではありません。フィールドエンジニアでない事業企画の求人にも同じ種類の条件が付いており、出張や転勤の条件は職種名だけでは見分けられません。
年収に含む残業代
TOWAの技術職の公式求人は、年収の欄に『※時間外勤務時間30時間程度含む』と注記しています。東京エレクトロンFEのフィールドエンジニア求人にも、『※年収には地域手当・残業手当を含みます』という注記があります。
提示された額に何時間分の時間外勤務が入っているか、その分が固定で支払われるのか実績に応じて精算されるのかは、文面だけでは確かめられません。
▶ TOWAの転職難易度は?職種別の応募条件や年収、勤務地を解説
面接で聞くこと
求人票に土日休みと書かれていても、納入先のトラブル対応で休日に出る日や夕勤・夜勤の有無は、その欄に載っていないことがあります。配属予定の部署にそうした対応があるか、あるならどのくらいの頻度かは、面接で聞いておきます。年収に含まれる時間外勤務の時間数と、その分が固定で払われるのか実績で精算されるのかも聞きます。
担当する納入先の国も、連絡や出張がどの時間帯とどの地域に寄るかに関わります。忙しさの山が重なる立ち上げ時期は、通常の月とは分けて働き方を確かめます。
よくある質問
半導体製造装置メーカーは景気の影響を受けますか?
はい、受けます。日本半導体製造装置協会によると、日本製半導体製造装置の販売高は前年度比で2023年度に9.2%減、2024年度に29.1%増と、年によって大きく振れています。
業界全体の波の仕組みは、別の記事で解説しています。
▶ 半導体業界はやめとけ?そう言われる理由と当てはまる職種や会社を解説
まとめ
装置メーカーの忙しさは納入先の日程に左右されることがあるため、会社の平均残業を見る前に、今の忙しさの出どころを分けて考えます。
打つ手は、今の忙しさの出どころで別々です。立ち上げの時期だけなら続けて様子を見て、担当についてくる呼び出しなら社内で担当や職種を変えます。同じ職種のまま会社を移っても、納入先から来る忙しさは付いてくることがあります。
山のない月にも帰れないなら、会社を移ることも選べます。
移る場合や入社を決める前は、求人票の出張の欄と年収の注記を読みます。残業欄から確かめられるのは平均月残業の幅までなので、山の時期と部署の夜間・休日の対応は面接で聞いておきます。


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