メーカーの技術職で月40時間前後の残業が続いても、周りに比べる材料がなければ、多いのか普通なのかは決められません。製造業の残業は、厚生労働省の統計で月13〜14時間台です。
ただ、製造業全体の平均は規模や職種で差が大きく、そのまま自分の残業と比べる数字にはなりません。比べる相手は、規模・年代・職種ごとの平均と、月45時間の線です。
この記事では、開発・設計・生産技術・品質保証などの技術職に向けて、規模・職種ごとの平均と月45時間の線を解説します。自分の月の残業を並べれば、多いのか普通なのかの目安がつきます。
製造業の残業時間の平均
毎月勤労統計 令和7年分確報で、製造業の月の所定外労働時間は、パートを含む就業形態計で13.4時間、フルタイムの一般労働者で14.7時間です。
- 就業形態計(パートを含む) 製造業13.4時間(調査産業計9.8時間)
- 一般労働者 製造業14.7時間(調査産業計13.2時間)
- パートタイム労働者 製造業5.0時間(調査産業計2.3時間)
出典:厚生労働省 毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報(2026年2月公表)第2表・事業所規模5人以上・月間の所定外労働時間(早出・残業・臨時の呼出・休日出勤等の実労働時間)
製造業の常用労働者に占めるパートタイム労働者の比率は約13%です。パートの所定外は一般労働者より短く、パートを含む就業形態計はそのぶん低く出ます。フルタイムで働く人が自分の勤怠を製造業全体の平均と並べるなら、14.7時間のほうです。
フルタイムどうしなら、製造業の所定外は調査産業計より1.5時間長い程度です。
ただし、一覧の製造業の値はどれも工場の作業者を含めた業界全体の平均で、技術職だけを集計したものではありません。
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会社の規模による残業時間の差
製造業の残業の表は、勤め先の規模の列から見ます。残業に当たる超過実労働時間は会社の規模が大きいほど長く、1,000人以上は16時間、10〜99人は10時間です。年齢で分けると、1,000人以上と100〜999人の列では30〜34歳が最も長くなります。
| 年齢 | 1,000人以上 | 100〜999人 | 10〜99人 |
|---|---|---|---|
| 年齢計 | 16時間 | 13時間 | 10時間 |
| 25〜29歳 | 21時間 | 17時間 | 13時間 |
| 30〜34歳 | 22時間 | 18時間 | 13時間 |
| 35〜39歳 | 20時間 | 16時間 | 13時間 |
| 40〜44歳 | 17時間 | 15時間 | 12時間 |
| 45〜49歳 | 15時間 | 13時間 | 10時間 |
出典は厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査 産業大分類 第1表で、製造業・2025年6月分・企業規模10人以上・一般労働者・男女計の超過実労働時間です。上で見た毎月勤労統計の平均とは別の調査です。年齢の行は別々の人の平均で、1人の残業が年齢とともにこう変わるという見込みではありません。
企業規模計で見た製造業全体の残業時間は13時間で、産業計の11時間より長くなります。1,000人以上と10〜99人の差は、産業計では13時間と9時間で4時間ですが、製造業では6時間あり、30〜34歳の行では9時間に開きます。
技術職の残業時間
技術者の残業は職種別の表で比べます。統計の職種は機械・電気電子・輸送用機器・化学と扱う分野で分かれているので、設計・生産技術・品質保証の担当は自分の扱う分野の行を見ます。
賃金構造基本統計調査 令和7年の職種別の表では、機械技術者と電気・電子・電気通信技術者の超過実労働時間はどちらも規模計16時間です。
| 職種 | 規模計 | 1,000人以上 | 100〜999人 | 10〜99人 |
|---|---|---|---|---|
| 機械技術者 | 16時間 | 17時間 | 16時間 | 12時間 |
| 電気・電子・電気通信技術者 | 16時間 | 18時間 | 16時間 | 9時間 |
| 輸送用機器技術者 | 20時間 | 19時間 | 22時間 | 15時間 |
| 化学技術者 | 13時間 | 15時間 | 11時間 | 10時間 |
出典は厚生労働省 令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)第5表(産業計)で、製造業に限った値ではありません。2025年6月分・企業規模10人以上・一般労働者・男女計の超過実労働時間で、電気・電子・電気通信技術者は通信ネットワーク技術者を除く区分です。
輸送用機器技術者は4職種のうち最も長く、規模別では100〜999人の22時間が1,000人以上と10〜99人のどちらよりも長くなります。化学技術者は1,000人以上の15時間だけが規模計の13時間より長く、100〜999人の11時間と10〜99人の10時間は短くなります。
賃金構造基本統計調査の値は2025年6月の1か月分です。残業は月によって上下するため、自分の数字も数か月をならして並べます。
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機械技術者
機械技術者は、規模計の年齢別では30〜34歳が22時間でいちばん長く、25〜29歳は20時間、40〜44歳は18時間です。
30代前半で機械設計や生産技術を担当しているなら、月40時間はこの年代の平均の約1.8倍です。
会社の規模による開きは、1,000人以上と10〜99人のあいだで5時間あります。機械設計や生産技術の担当は、年代と規模の両方で平均が変わります。
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電気電子技術者
電気・電子・電気通信技術者の残業は、10〜99人と比べて1,000人以上で2倍の長さになります。回路や電気設計の担当で月40時間なら、1,000人以上の平均の2倍強、10〜99人の平均の4倍強です。
一方で、同じ職種別の表の所定内実労働時間は1,000人以上156時間・10〜99人166時間で、小さい会社のほうが長くなります。所定内に残業を足すと、月の実労働時間は1,000人以上174時間・10〜99人175時間でほぼ同じになり、残業の差だけでは規模ごとの忙しさは分かりません。
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残業は月何時間から多いのか
法律の上限から見ると、自分の残業が多いかどうかは、月45時間と月80時間の線のどこに入るかで決まります。毎日の残業は、月に直すとその線に当てはめられます。
月45時間の線は、毎日の残業でいえば2時間と3時間のあいだです。
| 毎日の残業 | 月に直すと | 位置づけ |
|---|---|---|
| 1時間 | 約19時間 | 月45時間以内 |
| 2時間 | 約38時間 | 月45時間以内 |
| 3時間 | 約57時間 | 月45時間超 |
| 4時間 | 約76時間 | 月80時間の手前 |
月に直した値は、毎日の残業に出勤日19.1日をかけ、小数第1位を四捨五入したもので、休日出勤は入っていません。出勤日は、毎月勤労統計 令和7年分確報の第2表にある事業所規模5人以上・一般労働者の製造業の値です。
以下の線は、1日8時間・1週40時間を超えた法定外労働時間で数えます。所定が1日8時間の会社なら、勤怠の所定外労働時間と同じ時間なので、表の位置づけはそのまま読めます。
所定がそれより短い会社では、勤怠の残業の一部が法定外に数えられず、そのぶん線までの余裕が勤怠の数字より大きくなります。たとえば始業9:00・休憩12:00〜13:00・終業17:30、所定7時間30分の会社で18:00まで働くと、会社の残業は30分でも、法律上の時間外労働はありません。
月45時間以内
月40時間前後の残業は、月45時間の線の内側に入ります。時間外労働の上限は、原則として月45時間・年360時間です。
たとえば月40時間が繁忙期の3か月だけで、ほかの月が月20時間なら、年の合計は300時間で、年360時間の内側です。一方で、毎月40時間が続くと、9か月で年360時間に達し、10か月目で超え、12か月では年480時間です。
月45時間超
臨時的な特別の事情があり労使が合意して特別条項を結べば、月45時間を超える月を年6か月まで設けられます。その場合も時間外労働は年720時間以内に収めます。
毎日3時間の残業は月約57時間で、毎月続けると7か月目に、月45時間超を認められる年6か月を超えます。
月80時間以上
特別条項があっても、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2〜6か月のどの平均でも月80時間以内に収めなければなりません。単月で100時間に届くか、2か月平均から6か月平均までのどれか1つでも80時間を超えれば、この線を越えます。
脳・心臓疾患の労災を判断する厚生労働省の基準は、1週40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるとしています。さらに、月100時間または2〜6か月平均80時間を超えると、関連性が強いと位置づけています。表の毎日4時間の行は月約76時間で、月80時間の線のすぐ手前です。
研究開発の仕事に残業の上限はあるのか
新技術・新商品などの研究開発の業務には、月45時間・年360時間といった時間外労働の上限がかかりません。ただし、その範囲は狭く、専門的、科学的な知識や技術を持つ人が新しい技術や商品を開発する場合に限られます。既存の商品やサービスにとどまるものや、もっぱら商品を製造する業務は含まれず、ほかの業務と同じく上限の対象です。
厚生労働省の確かめよう労働条件のQ&Aが示す範囲に入るかどうかは、職種の名前ではなく仕事の内容で決まるため、設計・生産技術・品質保証の担当も担当業務の中身で見ます。
上限から外れる業務でも、1週間あたり40時間を超えて働いた時間が月100時間を超えると、会社は医師の面接指導を受けさせる義務を罰則付きで負います。面接指導のあとは医師の意見を踏まえ、必要なら就業場所の変更・職務内容の変更・有給休暇の付与などの措置をとります。
転職先の残業時間の調べ方
候補の会社の残業を確かめる資料は、会社が公表する月平均と、求人票に書かれた平均残業の2つです。
- キオクシア 33.9時間(会社全体)
- 東京エレクトロン 32時間(日本)
- ローム 21.3時間(単体・2025年度)
- ルネサス エレクトロニクス 19.5時間(一般組合員)
- アドバンテスト 19.4時間(日本・中国・韓国のグループ、管理職を除く・2024年度)
一覧の数字は、各社が採用ページやESGデータで公表している値です。会社によって、所定外労働時間・時間外労働・残業時間と呼び方が違います。数える範囲と年度も会社ごとに違うため、一覧の数字どうしでは残業の多い少ないを比べられません。
▶ キオクシアの転職難易度は?中途採用の人数と職種別の応募条件、勤務地、年収を解説
求人票の記載は、キオクシアと東京エレクトロンが平均残業、TOWAが年収に含む時間外勤務です。
- キオクシア 生産技術 月20〜30時間(求人ごとに20・25・30時間)
- キオクシア プロセス技術・デバイス技術 月10〜40時間(30時間の求人が最も多い)
- 東京エレクトロン(宮城)プロセスエンジニア 月35〜45時間程度(平均月残業時間)
- TOWA(レーザー加工プロセス開発ほか) 月30時間程度(年収に含む時間外勤務)
会社の公表値は会社全体や単体などを1つにまとめた数字ですが、求人票の平均残業は職種ごと・求人ごとに書かれます。公表値は範囲と年度を確かめ、応募する職種の求人は1件ずつ見たうえで並べます。
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製造業の残業時間についてよくある質問
始業前の準備時間も残業になりますか
会社に命じられた業務に必要な準備を事業場内で行った時間は、労働時間になります。始業前の準備が労働時間に含まれるかどうかは、事情ごとの個別の判断です。
平均と並べるときは、勤怠に始業前の時間が入っているかを、タイムカードやPCの使用時間などの客観的な記録で確かめます。毎月勤労統計の所定外労働時間には早出が入っているため、始業前の時間が勤怠に入っていないと、自分の数字は平均より短く出ます。
休日出勤は残業時間に含まれますか
毎月勤労統計の所定外労働時間には休日出勤が入っているので、平均と並べるときは、換算表の月の値に勤怠の休日出勤の時間を足して数えます。
土日休みで日曜が法定休日の会社では、土曜の労働は、週40時間を超えた分が時間外労働に数えられます。月100時間未満の線は、日曜に働いた休日労働も合わせた合計で数えるため、時間外労働が月45時間以内でも、休日労働を足して合計が月100時間に届けば違反です。
まとめ
月40時間前後の残業は、技術職の規模別・年代別のどの平均と比べても2倍近くかそれ以上ですが、月45時間の線の内側です。その水準が繁忙期の数か月に限られるのか、毎月続くのかで重さが変わり、毎月続くなら年の上限を超えます。
毎日の残業時間は出勤日数をかけて月に直し、月45時間と80時間の線のどこにいるかを確かめます。


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